東京千代田区から群馬・高崎へ
- hiroshi tsukamoto
- 6月18日
- 読了時間: 6分
更新日:6月20日
― 地方でみつけた、静けさとぬくもりに包まれる家 ―
都心の一等地・千代田区で長年暮らしてきたKさんご夫婦が終の住処として選んだのは、群馬・高崎の丘陵地。3年半前にマンションでの都会生活から一転、高崎の町を望む地に家を建て、ゆたかな自然に囲まれた日々をスタートしました。
土地探しから家づくり、暮らしの変化、そして「最後の引っ越し」と語る今の思いまで――
東京から群馬へ移住されたご夫婦の、新たな暮らしのかたちをご紹介します。

1.移住のきっかけ
長年、東京の中心・千代田区の賃貸マンションで暮らしてきました。
利便性も、環境も申し分ない場所。夜中にふと買い物に行きたくなっても徒歩圏内にコンビニが3軒。まさに「何でもある暮らし」でした。
けれど、ふと、ふたりでこんな話をするようになったんです。
「このまま東京で老後を迎えて本当にいいんだろうか…?」
親の面倒の心配もなくなり、東京にこだわる理由が薄れた今、もっと静かで、自分たちらしい暮らしができる場所を探したいと思いました。
それに、都内の賃貸暮らしは、住み続けるほどに“もったいない”という気持ちもありました。
賃料は月25万円。築40年近い物件で、インフラもやや古め。それでも「一等地」というだけで高額な家賃がかかります。
10年住めば3,000万円以上、何も残らないお金を払い続ける。
「どうせなら、これからの時間を、一戸建ての住まいで穏やかに過ごしたい」――その想いが、移住の原動力になりました。
2.移住に際して行ったこと
最初は都内近郊の三鷹や吉祥寺なども検討しました。けれど一戸建てを建てるとなると、敷地30坪でも5,000~6,000万円が相場。狭い土地で窮屈に暮らすなら、もっと選択肢があるのでは?と、視野を広げていきました。
幸い、ネットがつながってさえいればどこでも仕事ができる状況でしたので、山梨・千葉・茨城など、何度か地方の土地も見て回りましたが、なかなかピンとくる場所は見つかりませんでした。
そんな時、妻が偶然手に取ったのが、建築家・伊礼智さんの住宅本。

「こんな家づくりの方法があるんだ」と、衝撃を受け、何度も読み返し、家づくりのヒントになりそうなところには付箋をつけました。
「住むならこういう家を設計施工できるところに頼みたい」と、いろいろと調べていてみつけたのが、伊礼さんが施工を任せたことがある工務店「ヤマイチ」さんでした。
3.なぜ、この地を選んだのか?
初めて前橋にあるヤマイチさんのモデルハウスを訪れたのは、2020年。
コロナ禍ということもありガラガラの新幹線に乗って現地へ行くと、出迎えてくださった社長ご夫妻と娘さんがとても感じがよく、初対面なのに妙に安心したのを覚えています。
紹介された分譲地は、ただの住宅街ではありませんでした。

緩やかな傾斜地に建ち並ぶ家々。道路幅も広く、建築条例で守られた街並も美しく、眺望の抜け感も見事で、「東京では絶対に手に入らない場所」と心が躍りました。
斜面で造成が必要な敷地ではありましたが、「ここに家が建つなら、いますぐ決めたい」と、その日に即決。
移住者も多く、地元に根付きすぎていない雰囲気も、移り住んでくる私たちにはちょうどよかったのです。
4.なぜ、家づくりのパートナーにヤマイチを選んだのか?
土地探しから建築、申請手続き、造成まで、すべてを任せられたのは、ヤマイチの市川さんの誠実な人柄あってこそ。
「東京にいながら地方の土地や建築を監理するのは現実的に難しい」――その不安を払拭してくれました。

建築にあたっては、東京時代に使っていた家具がそのまま入るサイズにしてもらいました。
大きなダイニングテーブルがしっくりと収まる開放的な空間。それでいて、玄関からは一度絞って、リビングダイニングに入るとパッと北に抜けた眺望が広がるよう工夫されていて、訪れるお客さんも一様に驚かれる設計になっています。

性能面も特に数値などの指定はしなかったのですが、HEATG2相当の断熱性とC値0.5の気密性を確保した住まいに仕上げてくれて、移住後初めての冬も問題なく過ごせました。
住み始めてからも、落ち葉が詰まることを想定してつけなかった裏の軒に雨樋を取り付けていただいたりと、住んでいて気になったところはすぐに駆けつけて改善案を提案してくれ、安心して暮らすことができています
5.実際に暮らしてみての感想
一言でいえば、「心ゆたかに、おだやかになる暮らし」です。
朝起きると、庭からウグイスの声が聞こえる。仕事の合間にふと外を眺めれば、遠くの山々が見える。
東京では、ビルの隙間から空を探すような日々でしたが、ここでは空が広く、風が気持ちいい。
車必須な環境ではありますが、それも苦になりません。いざとなれば循環バスも使えます。
妻は移住を機に免許を取得し、今では買い物や図書館通いも楽しそうにしています。
地元のジムに通うようになってからは、ご近所の方から季節の野菜をいただくことも増えました。
驚いたのは、「食」の距離感です。
近くの直売所で買うトマトや玉ねぎは本当に美味しく、「こんなに食材って身近だったんだ」と改めて感じます。

6.これから移住を考える方へのアドバイス
移住には、覚悟も必要です。
知り合いのいない土地に飛び込むには、不安もありますし、都会ほどの利便性はありません。
都会と違って、大きな虫の登場に驚かされることもあります。
けれど、“誰と家を建てるか”“どんな人とつながるか”が明確になれば、案外なんとかなるものです。
私たちにとっては、ヤマイチの市川社長との出会いがすべてでした。
土地探しから相談に乗ってくれ、困ったことがあればすぐに対応してくれる。
「この人にお願いしてよかった」と心から思えています。

編集部より
東京での便利な暮らしから一転、見知らぬ土地に家を建てて生き方を変える――そんな決断は、決して簡単なものではありません。けれどKさんご夫婦は、理想のパートナーと場所に出会い、いま「自分たちらしい時間」を確かに育んでおられました。
「移住」という言葉には、単なる引っ越しを超えた「暮らしの再設計」という意味が含まれているのかもしれません。
この静かな丘の上で、風にそよぐ木々とともに紡がれているふたりの物語が、これから移住を考える誰かの背中をそっと押す一歩になれば…
そう願いながら、本記事をお届けします。
取材協力:
・Kさんご夫婦。
・地域サポーター: 市川慎二 株式会社ヤマイチ代表
※取材日:2025年6月
※構成・文:「暮らしを移す」 編集部
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