建築家インタビューvol.4 岡村未来子さん(Mアトリエ)
- hiroshi tsukamoto
- 3月21日
- 読了時間: 5分
更新日:4月8日
移住や二居の住まいを設計されている建築家や住宅作家に、心地よい二居・移住のための住まいのつくりかたを伺うこの企画。第4回は構造・温熱ともに高性能で、端正な住まいづくりに定評のある岡村未来子さん(Mアトリエ)。「暮らしを移す」地域サポーターのヤマイチさん、橋本工務店さんでの実績もある建築家です。
岡村さんは現在鹿児島県で二居のための住まいを設計されており、そのあたりも含めて、最新作「荏田の家」を見学させていただきながらお話をお伺いしました。(岡:岡村さん 編:編集部)
インタビュー 塚本浩史(株式会社アドブレイン代表 「暮らしを移す」編集部)

大手ゼネコン勤めから住宅作家へ
編:本日はお忙しいなかお時間いただき恐縮です。
岡村さんの最近の作品はほとんど撮影させていただいてますが、今回の物件も暮らしやすさと飽きの来ないデザインが印象的な住まいですね。
岡:この住まいは移住とか二居の物件ではないんですが、気持ちのいい方向に視線が抜けるよう開口部の計画をしていて、その点では移住や二居の家としても参考になる家といえますね。

編:岡村さんが独立されてからは撮影含めよく存じ上げているのですが、独立される前はどういう経歴だったんでしょうか?
岡:元々は大手ゼネコンの住宅部に勤めていました。その頃、建築家の永田昌民さんの作品集を拝見する機会があり、「こういう住宅を設計したいな」と思ったんです。住宅に真摯に向き合うようになったのはそれがきっかけでした。
そのあと、そのゼネコンの住宅部がなくなることになり、子育ての件もあってフリーランスとして設計事務所の手伝いをはじめました。そんなある日、建築家の伊礼智さんのブログをみつけて、伊礼さんの設計スクールに参加したんです。この全3回の講座が大学4年間より住宅について深く学ぶことができるもので、とても勉強になったんです。
いい建築は、目を養い、耳を澄ますところから
編:私が伊礼さんと取り組んでいる「住宅デザイン学校」でも「目を養い、耳を澄まし、手を錬り…」とよく伊礼智さんがおっしゃっていますが、やはり、いい作品を見たり、建築家から直接学ぶことはたいせつですね。
岡:そのあと伊礼さんの設計スクールにまた参加したんですが、その後の実務のなかでもっと体系的に住宅について学びたいと思い、京都造形芸術大学院建築デザイン分野堀部安嗣スタジオの門を叩いたんです。そこで横内敏人さんや三澤文子さんからも学ぶことができ、パッシブについても学び直すことができました。それから工務店さんの設計サポートをしたりしていたんですが、そのときに設計したのが「方形の家」でした。

編:ここも撮影にお邪魔させていただきましたが、高台の敷地を活かして角に視線を抜いた気持ちのいい空間だったことを記憶しています。岡村さんが設計される家はデザインも美しいんですが、温熱や耐震の性能もきっちり出していて、自然環境が厳しくなりがちな地方での移住や二居にはとても向いていると思います。
この「方形の家」は二階建てですが、岡村さんというと「平屋」のイメージがあります。平屋の対してのこだわりがあれば教えていただけますか?
岡:エクスナレッジ発行の書籍「小さな平屋」に取り上げてもらったのがきっかけで、たしかに平屋の依頼が多いですね。ただ自分自身も平屋が好きなんです。二階建てに比べ平屋のほうが構造的に自由なのもその理由のひとつです。

資産価値の高い住まいづくり
編:そういえば、いま霧島神宮で計画されている二居のための住まいも平屋でしたね。
岡:はい。もともと古屋が建っていて当初はリノベする案もあったんですが、ここから何世代にもわたって住まい手が変わっても手直ししながら住み継げる家にするために新築で計画したんです。業界紙の編集長を勤めるクライアントが「リノベしてまで後生に残したくなる中古の家と出逢えない」と嘆いていたので、その点は特に重視して計画しています。日本には、冬暖かく、夏涼しい温熱性能を有し、自然災害に負けない構造で建てるという最低限のことをクリアした家がほんとに少ないんです。そこをなんとかしたいという想いもありました。

編:オンラインでこの霧島神宮の家の構造の話をされていたのを拝聴したんですが、解説として参加されていた構造家の先生が「文句のつけようがない」とおっしゃってましたね。
岡:この家は、構造は無理なくシンプルに、内部は住まい手の趣味や暮らし方であとからでも変えられる、そんな家になっています。実際、インフィルは施工をお願いしている鹿児島の工務店さんの設計士にお願いしているんです。スケルトンは耐久性・耐用性のあるものとして、インフィルは自由に変えられるようにしてあります。
編:岡村さんは普段から工務店さんと協働もされていますが、互いにリスペクトしあって、職能を活かし合う関係は素敵ですね。
いま、スケルトンとインフィルの話が出ましたが、普段からそのあたりは意識されているんですか?
岡:なるべく永く認められた素材や工法を採用するようにして、そこにコストを掛けるようにしています。そのあたりは、住み始めたら簡単には変えられないですから。デザインの部分でも、流行廃りの派手なものでなく悪目立ちせず、景観的にも馴染む家になるように心掛けていますね。
編:特殊解な住まいだと他人には住み継げないですからね。資産価値を考えるとスケルトンにお金を掛けて、永く住み継げる家にすることが求められます。二居の場合、軽井沢のような場所を除くと土地に関しては資産価値はあまり期待できませんが、環境の良さを取り込んで、飽きの来ないデザインの住まいとしておくことで、将来売却したり、賃貸に出したりする際に優位に働く可能性はありますね。
「霧島の家」は完成したらぜひ拝見しにお邪魔したいと思っています。本日はありがとうございました。
Mアトリエの作例

Mアトリエについて
事務所名 | Mアトリエ |
住所 | 神奈川県大磯町東小磯 |
Web site | |
移住・二居実績 | 3棟 |
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